異形特務空母〈那由多〉
激突!第八海洋海戦
予告編



クリックで大きくなります

異形特務空母〈那由多〉
激突!第八海洋海戦
(いぎょうとくむくうぼ なゆた)
 2004年3月18日発売
予価892円(税込み)
学習研究社
歴史群像新書


謎の“地上空母”、シベリアに出現!
百式特務戦車〈オト〉の合体により
構成される地上空母〈那由多〉
――それは、日本陸海軍が開発した対欧州軍用の
秘密戦略兵器である……。
だが、〈那由多〉が投入された戦場は、
想像を絶する変化を遂げたロシアの大地だった!
俊英・吉田親司が放つ衝撃の新・架空戦記!!

予告編はこちら!


表紙 & メカデザイン
飯島祐輔先生






一九二〇年四月二九日、
謎の“大怪球”落下により、
モスクワは消滅した!

極点移動により北米大陸は凍結し、
ロシアの内陸には第八の海洋
「ケノービ海」が出現した!

――そして21年後。

温暖化したシベリアの
豊かな地下資源をめぐり、
大日本帝国とドイツを中心とする
欧州連合軍に
一触即発の緊張が生じていた!

そのシベリアを走破する異形の
陸上軍艦あり!

その名は〈那由多〉
前代未聞の合体戦車空母である。

制空権が封じられた場所にて
暗躍する〈那由多〉の活躍や如何に?

架空戦記のネオ・パラダイム
ここに堂々の登場!


目次
プロローグ 軍港炎上
第一章   沈黙の黙示
第二章   シベリアン・ランナウェイ
第三章   悪夢胎動
第四章   ザ・ドッキング
第五章   牽強附会
第六章   阿修羅の空母戦
エピローグ 予兆


 責任者とは部下の前で醜態を見せてはならぬ。上が浮き足立つと、下は恐慌状態に陥るからだ。
 しかし彼らとて人間である。一人になるや、本音が出て当然だった。
「……まずは撃墜か墜落か、不時着かを確認せよ。ふん、そうか。無線員からの最後の連絡は“攻撃ヲ受ケツツアリ”だったのだね。
 ならば体勢を整えねばならぬ。このまま一方的に殴られては、クラスノヤルスクは灰燼に帰してしまうぞ。座して死を待つわけにはいかん。
 よし……弐号艦を動かそう。九〇分で出航できるように手配せよ。君はもう艤装長ではない。弐号艦の初代艦長に任命する。
 敵戦艦は三隻。相手にとって不足はなかろう。
 俺もすぐに行く。それまでは一切の攻撃は控えさせろ。艤装網? 取る暇はなかろう。戦闘に差し支えなければ、そのまま放置だ。
 それから〈那由多〉に使いを出してくれ。補給ユニットを四台、この造船所に廻せと言うんだ」
(第3章より)

「戦艦〈ダンケルク〉艦長、モーリス・カルネ大佐より入電あり! 読みます」
 通信士官の声が〈フッド〉のブリッジに響く。
「先刻の自発的対空砲火は自衛の為なり。
 日本海軍機は、明白なる攻撃の意志を有したまま、我が艦隊に接近したものと推察さる。その証拠に、翼下に大型魚雷らしき影を確認せり……」
 何を馬鹿なことを。カージー艦長は思った。フランス人には魚雷と浮舟の区別すらつかぬのか!
 それが弁解にすぎぬことは明白。同じ感想を抱いたのだろうか、チャーチル海相はこう言った。
「非を非と認めぬのは外交上の常識だが、言い訳が下手すぎる。
 あるいは……連中、本気で対日戦争突入を考えているのではないか。意見一致が難しい多国籍艦隊の弱みが露呈したな。
 それにしても対空射撃の精度は大したものだ。低空を飛ぶ鈍足機とはいえ、一撃で撃墜するとは」

(第4章より) 


 砂州賀大佐は、眼前のハンドルを片手で掴むや、伝声管の蓋を開け、それに怒鳴ったのである。
「通信士。全構成車輌に通達を出せ。
 これより〈那由多〉は発艦態勢に入る。全ての制御系を艦橋ユニットへ渡すのだ。発進は三〇秒後。時速二〇キロで風上へ走る。
 九九艦爆ならびに九七艦攻に告ぐ。発動機始動。準備できしだい発艦せよ。攻撃目標は洋上の敵空母。詳細は上空待機中に通達する」
 瀬賀大佐は砂州賀の動きに注目した。
 彼は合体警告灯が青ランプに変更していることを確認したあと、左右二本のハンドブレーキを同時に解除した。実に慣れた動きだ。
 同時にアクセルを踏む。緩やかな機動音と共に、単純計算で七〇〇トン強の物体がしずしずと歩み始めた。
 連結器で電気的にも接合された〈那由多〉は、全ての履帯を完全に同調させ、同時に回転させることにより、分解せずに進撃することが可能なのだ。
 一八台の百式特務戦車〈オト〉は、幅三七センチという分厚い履帯をシンクロさせ、ロシアの大地を蹴りつけていく。
 瀬賀は驚愕の視線を送った。なぜ奴に〈那由多〉が操縦できるのだ?

(第6章より) 

異形特務空母〈那由多〉
激突!第八海洋海戦

 

2004年3月18日発売予定。