帝国の聖戦5
回天編
国際自衛隊1942〜68
予告編
戻ります


全てを終わらせる時がやって来た

ロシアの大地は煉獄と成り果て、
裏切りの叫びが平原に満ちていく。

大西洋は関ヶ原と化し、歴戦の艨艟たちは
その身を次々に海面下へと沈めていった……

モスクワ、ベルリン、ワシントン
“悪の枢軸”の首都を急襲するは
ISDF精鋭部隊なり!

イタリア艦隊大暴れ!
ニューヨーク無差別艦砲射撃!
自由の女神、倒壊!

そしてジェルジンスキーは
どこで吠えるのか?

異形の三兄弟は因縁の地に再結集し、
全ての物語に幕が引かれていく…

第二次大戦終焉の時はここに来たれり!

「帝国の聖戦5:回天編」

ISDF
I
nternational Self Defence Force

目次
 プロローグ  機会主義者のいる風景
 第一章    大東亜に敵影なし
 第二章    骨肉の争い
 第三章    闘将たちの挽歌
 第四章    洋上の関ヶ原
 第五章    錦の御旗 
 第六章    首都陥落
 エピローグ  紐育返還記念式典


  熱波と轟音。
 それが総旗艦〈飛騨〉の後方から渾然一体となって押し寄せてきた。正体は言うまでもあるまい。
「後続隊、砲撃開始しました!」
 砲術長磯谷明良少佐が状況を解説する。それに追従するかのように、さらなる主砲発射音が艦橋配置員の耳朶を打った。
 この時、太平洋平和強制艦隊は〈飛騨〉を先頭に七隻の戦艦群で構成されていた。彼女たちは順次、その大筒から沸騰した火弾を弾き出していく。
 その中でも目立つのは巨艦〈武蔵〉であった。単縦陣の二番艦に甘んじてはいるが、彼女は文字通り世界最大の艨艟だ。日本海大海戦の結果、独ソの超戦艦を討ち滅ぼした〈武蔵〉は、独力でその座を勝ち取ったのである。
 空前絶後の四六センチ砲が剛腕を振り上げ、呻り声を発する。その数は三連装三基九門。生き残りの戦艦では最大の艦載砲だ。

(第1章より)

  僚艦の壮絶な散り際に呆然とする小畑艦長の鼓膜に、井上司令の怒号が響いた。
「何をしておる。合戦準備だ。使用可能な全砲門を開いて応戦せよ。後続の〈扶桑〉にも伝えぃ!」
 艦橋の全員が機敏に動いた。それぞれのプロフェッショナルが機械的に台詞を述べていく。
「主砲砲撃開始二〇秒前! 総員対ショック、対閃光防御。弾種徹甲。目標、三時方向米空母。距離一二〇〇。敵は実質的停止状態」
「高角砲塔群、発射用意よろし。主砲発射に続かんとす」
「〈扶桑〉から信号。“当方射撃準備ヨシ。旗艦発砲マダナリヤ”」
 長年、ISDF欧州平和強制艦隊に配属されていた古株の同型艦は、持ち得た牙を振るう機会を待ちかねていたのだった。ネオ・ユトランド沖海戦において戦艦〈ティルピッツ〉を沈めた三六センチ砲一二門が、その鎌首を擡げていく。古めかしい艦載砲ではあるが、武器であるからには、人を殺すという目的は達成できるはずだ。

(第3章より)

「敵機大編隊、接近! 戦爆連合一〇〇機以上。征空隊の第一次防衛線を突破されました!」
 戦艦〈武蔵〉艦橋に金切り声が響いた。飛行機という兵器の恐ろしさを熟知した者が発した魂の叫びだった。
 真珠湾から日本海まで、帝国海軍改めISDF太平洋平和強制艦隊は、常に豊富な航空支援のもとに活動を続けていた。米独ソの戦艦群はその毒牙にかかり、一隻また一隻と太平洋の底へ引きずり込まれていった。
 そんな現実を目の当たりにしていた彼らだからこそ、尚のこと畏怖の念を強くしたのだった。〈武蔵〉乗組員にはよく判っていたのだ。数を頼みに襲い来る攻撃機に狙われては、巨大戦艦といえども生き残れないという現実を。
「狼狽えるな!」太平洋平和強制艦隊総司令である堀悌吉大将が鋭く叫ぶ。「手順どおり対処すればよいだけだ。艦長、頼むぞ」
 艤装委員長から初代艦長にスライドした有馬馨大佐は、小さく一礼してからきびきびとした調子でマイクに向かい、こう告げた。
「艦長より総員へ。敵機来襲の公算極めて大なり。各自、天佑を信じ、持ち場にて最善を尽くせ」

(第4章より)

書下ろし架空戦記
 帝国の聖戦5
国際自衛隊1942〜68

2003年7月29日発売予定。



戻ります