帝国の聖戦1
国際自衛隊奮戦記1938〜41
予告編
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恒久平和の創造。それは人類の永遠の夢。

だが、力無き理想は無力。この悪しき世界は
武力というアンビバレントなものに頼らねば、
それを現出させることはできなかった…。


国際連盟。それは第一次大戦後、結成された疑似世界政府。

その機関に限定的ながら軍事力を
所持させるべく、秘策を巡らすは石原完爾。

そして発足した国家超越軍隊を世人はこう呼んだ……。

ISDF
I
nternational Self Defence Force
国際自衛隊と…。

破天荒な設定で送る架空戦記新シリーズ、ここに発進!

第一条 
国際自衛隊は純粋なる防衛専門の軍事組織なり。侵攻攻撃用の兵力・装備はこれを有せず。
第二条 
国際自衛隊は常備軍としての機能を必要とす。よって国際連盟常任理事国は、その所持せる軍事力を一定の比率に従い、供出する義務を負う。
第三条 
国際自衛隊は国際連盟加盟国ならびにそれに準じた国の要請のもとに、出動を認められる。その活動範囲は、要請を受けた対象国の国内および領海内に限定されるものとす。
(第1章より)


 ニュカネン下級軍曹が見た脅威。それはフィンランド陸軍が全くといってよいほど持ち合わせていない陸上兵器だった。鋼鉄の毛皮を纏い、猛り狂った剛腕を何本も突きだした陸上戦艦の群れ……。
「戦車だ!」
 誰かが事実を叫んだ。悲鳴が塹壕内をこだまする。兵士間に惹起した恐怖心は、悪性の病原菌の如くあっという間に伝染してゆく。経験や階級などは関係なく、戦車とは歩兵ならば誰もが等しく畏れ、誰もが等しく忌み嫌う存在なのだ。
(第4章より)


「〈グラフ・シュペー〉停船する兆し、いまだなし!」
 その報告を聞いた〈飛騨〉艦長久慈大佐は、潮焼けした顔に苦渋の色を滲ませた。
 遙かな沖合に双眼鏡を向ける。嫌みなほど黄色い月明かりに照らされて、問題の艦が直進を続けている様が望見できた。
(第5章より) 

 
それは接敵を意味していた。久々の経験に全身の毛穴が開き、悪寒が背筋を走る。周囲の者たちに、知性的な人物であることを印象づけるのに大いに役だっている広い額から、噴き出るかの如く流れ出る脂汗を拭いつつ、彼は射撃準備を命じた。耳障りなブザーが鳴り響き、にわかにブリッジ内部は緊張に包まれる。
「提督」参謀長W・W・“ポコ”・スミス大佐が横から口を出した。「こちらから先制攻撃をかけるおつもりですか!」
 整髪剤で寝かせつけた黒髪に手をやりながら、キンメルは言う。
「まさか。我が合衆国が交戦中であるイギリス海軍の艦だと断定できるのならば、遠慮なしに砲撃できるんだがね。確証がない以上、こちらから手を出すわけにもいかんだろう。ポコ、お前はどう思う。こいつは何物だ?」
(第6章より) 

書下ろし架空戦記
 帝国の聖戦1
国際自衛隊奮戦記1938〜41

2002年4月27日(土)発売予定。



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