超時空戦闘艦『大和』
飽食戦線ガダルカナル
予告編



 疑惑の貨客船〈万景峰号〉が
時空の渦に巻き込まれ、
太平洋戦争真っ直中のガダルカナルへと
タイムスリップ!

 ここに正史は歪んだ。
ソロモン海に戦艦〈金剛〉〈榛名〉が吠え
“ガ島の虎”こと山下奉文中将が
蠢動を開始する。

 北朝鮮への支援米で腹を満たした日本兵が、
97式中戦車部隊と共に、
米軍ヘンダーソン飛行場へと殺到! 

 隠見するは時空遡航戦艦〈大和〉。
空を征くは垂直離着陸機〈覇電〉。
そして暴露される新型肺炎SARSの正体とは?
 
波乱と怒濤の一大戦争巨編。
ガダルカナル撤退成功60周年記念出版!


目次
プロローグ 新型糧秣
第一章   売国奴の選択
第二章   地獄への帰還
第三章   サボ島沖の魔艦
第四章   ガダルカナルの虎
第五章   バトルシップ・ウォーズ
第六章   究極兵器S号弾
エピローグ 輪廻の蛇

「おそらくは味方の輸送艦隊でしょう」
 暗闇の中で誰かが言った。
「水上機母艦の〈日進〉が退避中のはずですから」
「だが針路が違いすぎる」
 航海参謀らしき声が響く。
「〈日進〉ならば、もっと西を通過するはずだ。時間的にも出現が早すぎるぞ」
 不毛なやりとりを耳にした五藤少将は、状況を単純化する事を望み、こう命令を下したのである。
「ただちに発光信号を送れ。“ワレ、アオバ”だけでよい。急ぐのだ!」
 有無を言わせぬ命令に、羅針艦橋のすぐ脇に設けられた信号探照燈が明滅した。
 意外にも、返事はすぐに寄せられた。
 水平線の彼方から、さりげない自己主張を開始した発光信号。それはなんと英語のモールス信号だったのである。
 だが、それは相手が敵であることを意味してはいなかった。未知なる艦は、こう告げていたのだ。
“My name is YAMATO……”

(第3章より)


 「戦車、前へ!」
 隊員には馴染みの台詞を叫び、無限軌道を前進させたのは、帝国陸軍大尉間枝喜雄であった。
 珍しく積極的攻撃をしかけてきたアメリカ兵を九二式車載機機関銃で薙ぎ倒したあと、間枝は直ちに移動を命じた。
 機甲部隊とは常に動くことを求められる。戦場で停止状態を維持することは死に直結するのだ。
 それを後続車に伝えたかったが、相変わらず無線機の調子は悪かった。
 電気系統は大丈夫なのだが、どうやら辺り一帯に電波障害が生じているらしく、スピーカーは雑音を奏でるのみ。展望塔の上にある巨大な“ハチマキアンテナ”は無用の長物と化していたのだ。

(第4章より) 

 
 程なくして報告が上がってきた。〈榛名〉が有する全砲塔のターレット部に異物が突き刺さったもよう。現在、主砲は旋回不能!
 続報によれば、四基ある砲塔の全てが、まったく同様の損害を受けたらしい。まるで目には見えぬ手で導かれたかのように、件の円筒が同一の場所に命中しているというのだ。レベルの違い、格の違いを見せつけるかのように……。
 至急、修理班を向かわせましょうと進言した砲術長に対し、石井艦長はそれを制止した。
「待て。安易に触れてはならぬ。不発弾の可能性があるぞ!」
 結局のところ、〈榛名〉は持てる牙を封印されてしまったわけである。どうやら〈金剛〉も同様の状態らしい。その火砲は沈黙を余儀なくされていた。
 この隙を利用するかのように〈サウス・ダコタ〉は遠方へと逃げていく。
 これで艦隊決戦によるアメリカ戦艦撃沈は、永遠に夢物語となってしまった。航空機全盛の時代に、こうした機会はもうないであろうに……。
 やがて石井艦長の手元に、応急修理班から連絡がもたらされた。各砲塔の動きを止めた物体は噴進弾らしきモノの如し。その側面には打刻された英文字を確認せり!
 その単語を欲する艦長に、伝令兵は一枚の紙を差し出した。それにはこう記されていた。

MADE・IN・USA 17/MAY/2019

(第6章より) 

書下ろし長編仮想戦史
 超時空戦闘艦『大和』
飽食戦線ガダルカナル

2003年11月5日ごろ発売予定。