超空の神兵
―戦艦〈大和〉バルチック艦隊ヲ殲滅ス―
予告編


沖縄海域に奇跡を生んだ〈超空の神兵〉……。
だが、勝利は束の間だった。

1945年10月、圧倒的物量を誇る米軍は、
九州上陸作戦を強行! 
遂に日本本土は戦場と化す!

そして……
時空の闇から昭和20年へと
漂着した一人の海軍大将がいた。
山本五十六その人である。

彼は、亡国への道をひた走る
日本の運命を逆転させるべく、
奇想天外な作戦を発案した!

その主軸兵力こそ、時空遡航戦艦〈大和〉!
起死回生の命令を受けた彼女は
再び時を駆ける!

ソ連戦艦部隊vs第2水雷戦隊
松型駆逐艦爆走!
迫り来るはハルゼー提督率いる
米最新鋭戦艦部隊!

昭和20年の初冬、日本海。
大艦巨砲の宴が始まった……。

「逆ファイナルカウントダウン」
との誉め言葉を頂戴した
前作を超えるスケールで送る
〈超空の神兵〉シリーズ最新作
いま、ここに発進!

目次

プロローグ 『超神艦、降臨!』  

第一章   『英雄は死せず』  

   
最初の幕間劇 〈闇よ落ちるなかれ〉

第二章   『九州の防人』

   
第二の幕間劇 〈永遠の終わり〉

第三章   『燃えよ日本海』

   
第三の幕間劇 〈夏への扉〉

第四章   『神の鉄槌』  

エピローグ 『閉じられた時間の輪〜最後の幕間劇』 


「右翼、破損!」
 機長の小谷飛行曹長が叫ぶ。その声には明らかな動揺が見え隠れしていた。
 奇襲を受けたものの、機体はまだコントロール可能らしく、盛んに翼をバンクしている。護衛機に注意を促しているのだ。
 山本は軍刀に手をかけたまま、身動ぎもしなかった。いま彼にできることは、毅然とした態度を保ち、専門職であるパイロットたちに余計な負担をかけぬことだけであると、正しく認識していたのである。
 窓外に目を転じると、搭乗員から“メザシ”もしくは“タコ”と呼ばれている敵機が、前方情報から殴りかかって来るさまが見えた。
 ロッキードP38ライトニング双発戦闘機だ。
(第1章より) 



「主砲砲撃開始二〇秒前! 総員、対ショック用意!」
 ブリッジに威勢の良い掛け声が響く。勝者という既得権益が永遠に続くことを信じて疑わぬ響きだった。
「よし……発射せよ」
 艦の総責任者は、第一線に復帰できたことを喜びつつ、破壊開始を命じる合図を下した。
 これから民間人の血で染められることになる掌は、耳に宛われている。鼓膜を傷つけぬように、そして血塗れの指が視界に入らぬように……。
 着任したばかりの彼は、満足げな顔つきのまま、眼下にて緩やかに旋回を続ける二基の主砲塔を見つめていた。
 時刻は午前四時前。空は薄いピンク色に染まっている。今にも朝焼けが始まりそうな案配だ。
 儚げな光の下、米海軍自慢の艦載砲である五〇口径四〇六ミリ砲塔Mk7の猛々しい姿が見えた。
 三連装の剛腕が、無理やりシェイプアップしたかのような細長い艦体に据えられている。
 戦艦〈ウィスコンシン〉。
 巨艦〈アイオワ〉級の四番艦だ。基準排水量四五〇〇〇トンを誇る鋼鉄の猛獣である。
(第2章より) 

  戦闘機による迎撃は、もう不可能だった。
 最後の頼みの綱であった三四三航空隊にも、満足に戦える機体は存在しなかったのだ。
 昨日の戦闘の結果、どうにか帰投した紫電改隊も、穴だらけであり、徹夜の修理に追われていた。先ほど、体当たりを敢行してくれた秘匿機〈天雷〉を出すので精いっぱいだったのだ。
「〈大和〉は……〈大和〉はまだなのか」
 小澤長官は呻いた。
(……今こそ、神州日の本を守るため、神風を起こさねばならぬ時なのだ。民族の滅亡を防ぐためならば、俺は悪魔に魂を売ってやる。おお! 神兵よ、出でよ!)
 思考は現実化する。この場合もそうであった。
「電探に感あり! 海面に巨大な艦影らしきものを確認!」
 待ち人来たり。我がこと成れり。GF長官はそれを確信した。
「数は? 場所は?」
「電波障害が激しく、断定するのは危険ですが、一隻や二隻ではありません。推定海域は宮津湾付近……」 
 電探操作員の声を遮り、新たな報告が飛ぶ。
「地上観測班より連絡ッ! 天橋立付近に、大規模な遡時反応を視認!」
(第4章より) 

書下ろし架空戦記
 続・超空の神兵
―戦艦〈大和〉バルチック艦隊ヲ殲滅ス―

2003年2月中旬発売予定。