超空の神兵
―南雲機動部隊次元超越ス―
予告編
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 昭和二〇年四月六日。
成功の見込みなき沖縄突入作戦に邁進する
戦艦〈大和〉の眼前に、突如として神兵艦隊が降臨!
それは既に撃沈されたはずの空母〈赤城〉を肇とする
一大海上戦力であった…。

 空母六隻。艦載機三五〇機強。
彼らはまぎれもなく、パール・ハーバーを火の海にした南雲艦隊! 
精鋭無比なる機動部隊は、ある意図的な作為のもと、
時空の狭間からこぼれ落ち、昭和二〇年へと漂着してしまったのだ。

 混乱に苛まされる暇もなく、米艦載機の空襲が開始される。
迎え撃つは零戦二一型から成る戦闘機部隊。
少なからぬ犠牲を払いつつも、敵機を撃退した彼らは、
復讐の機会を虎視眈々と狙う。

 昭和16年を生きる一騎当千の熟練搭乗員は、
VT信管に代表される1945年の米軍科学技術に
太刀打ちできるのか? 

そして全ての元凶と目されるフィラデルフィア実験とは?

 薄暮航空攻撃。
帝国海軍伝統の水雷夜戦。
そして朝焼けに唸るは戦艦〈大和〉の四六センチ砲。

“超空の神兵”は沖縄海域に嵐を呼んだ!

 これぞタイムスリップ架空戦記の決定版! 
ここに堂々の登場!



 今になって寄せられた〈朝霜〉からの連絡。それは空襲を意味しているに違いなかった。有賀艦長は、後ろに位置する第二艦隊司令長官伊藤整一中将に視線を向け、長官が頷くのを確認してから命じた。
「読みなさい」
「はっ。『発:〈朝霜〉。宛:第二艦隊司令部。本文……ワレ、敵駆逐艦一と交戦中ナリ!』……」
「なんだと? 空襲ではないのか」
 有賀艦長の戸惑いが混濁した声に続いたのは伊藤長官だった。
「駆逐艦だと……。いや違うな。潜水艦の間違いだろう。こんなところに敵艦が単独でいるのは考えにくい」
「いえ、確かに“駆逐艦”と言っております!」
 押し問答のような状態に陥った〈大和〉艦橋に、新たなる衝撃が投げかけられた。
「〈朝霜〉から続報です! 『ワレ、敵カノン級駆逐艦を砲撃ス。効果甚大!』」

(第1章より)


  「ありゃあ駄目だ。艦橋にいた連中は全滅してるぞ」
 沈黙が暴力的なまでに勢力を拡張しつつある〈翔鶴〉艦橋で、誰かがぽつりと呟いた。
 その一言は、静寂を打破する効果をもたらすことはなかった。むしろ、全員の口を更に堅してしまった。何故ならば、それが認めざるを得ない現実であることを、誰もが再認識させられたからである。
 僚艦、それも艦種も同じフネが甚大な被害を被るという末期的光景は、〈翔鶴〉の艦橋を占める第五航空艦隊首脳部全員の視線を釘付けにしていたのだった。
 無理もあるまい。〈翔鶴〉右舷八〇〇メートルの近距離にて回避運動中だった〈蒼龍〉。その艦橋へとクラッシュした敵機は、その十数秒前までは、〈翔鶴〉への投弾コースに乗っていたのだ。一歩間違えれば、全滅していたのは彼らの方だった。
 帝国海軍は、日本海海戦以来の伝統として、指揮官は艦橋にあるべしという鉄則を頑なに守り通して来たわけであり、それが不文律となっている。当然、山口多聞少将を肇とする第二航空艦隊首脳は、そこに位置していただろう。艦橋が根こそぎ爆散してしまった今、遺体回収すら困難なのではないだろうか。
(第2章より)


  眼前に迫るスキージャンプ勾配。それは〈大和〉艦尾に据えられた艦載機発進補助装置であった。
 偵察機〈覇電〉は基本的に垂直離着陸機であるが、航続距離や兵器搭載量、そして何より使い勝手を考えると、短距離離陸方式で活用した方が良いに決まっている。その為のスキージャンプ勾配であった。
 角度は一二度。完全引き込み式で、着艦時には艦内に収納される仕組みになっている。〈大和〉には常時八機の〈覇電〉が搭載されており、発進時には大いに活用されていたのであった。
 後進いっぱいをかけ、発進の手助けをする〈大和〉の艦尾から、今まさにその勾配を蹴り、米東海岸へと向けて飛翔を開始した機があった。更級たちの乗る〈覇電〉である。
「……とうとう来てしまったな」年嵩の大将が言った。「この呪われた街へ……」
(第3章より) 

 

書下ろし架空戦記
 超空の神兵
―南雲機動部隊次元超越ス―

2002年9月10日ごろ発売予定。



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